坂嶋流記録庫

Inverse Archives

久しぶりの更新&自己紹介

久方ぶりの更新です。坂嶋です。 いろいろありましたが、コンテンツの活動一覧は地味に増えていたことにお気づきの方はおられるでしょうか(いや、いない)。一番新しい僕の活動、すなわち法月綸太郎『雪密室 新装版』(講談社文庫)の解説「イン・ザ・ウェ…

エア文フリ岩手開催記念

メフィスト評論賞法月賞受賞記念として書いた、新作評論「イーハトーヴはどこですか?」の序章と第1章を公開します。 令和元年度にデビューした岩手県産作家をとりあげており、第1章は南海遊論で、第2章は綿世景論、第3章で坂嶋竜と絡めてまとめる予定で…

入院報告&お知らせ

10月16日から23日までの8日間、盛岡の病院に入院していました。そして17日は人生初の全身麻酔による手術でした。 持病の治療を効果的に進めるために、生まれつき少しおかしかった部分を治すための手術で約2時間ほど。終了後、身体を動かせない1時間強のあ…

BABYMETAL『METAL GALAXY』(TOY'S FACTORY)

アイドルグループの部活動?から始まったBABYMETALも幼年期(BABY)や反抗期(RESISTANCE)を経て、銀河までスケールを広げた。一方で地に足を付けるように地球=世界各国も歌い上げている。 バブリーメタル「DA DA DANCE」やメタル盆ダンス「PA PA YA!!」、…

古野まほろ『時を壊した彼女 7月7日は7度ある』(講談社)

魂がぶつかり合う音が聞こえる――そんな気がした。 友人を救うため、何度も何度も時を戻して戦う彼女たちの青春がここにある。古野まほろの描く青春は、いつだって命がけだ。だからこそ、秘めた想いを言葉にし、論理と情理がぶつかり合い、望んだ未来を手にし…

有栖川有栖『カナダ金貨の謎』(講談社)

もともと有栖川有栖はロジックに定評のある作家ではあるが、有栖川作品における〝ロジック〟とは「これが伏線だったのか」という驚きと、「その伏線から犯人に辿り着くのが可能だったのか」という二重の驚きが重ね合ったものである。 その視点からこの短編集…

SPEC ~結~ 漸ノ篇/爻ノ篇

超能力を扱ったミステリドラマとしてスタートした本作は、視聴者の予想をはるかに越え、人類を滅ぼす側とその可能性を信じ守ろうとする側との戦いに焦点が移っていく。 当麻とセカイ、出現させる力と消失させる力。 それぞれが持つSPECの対照性は、その…

「SPEC 翔&天 〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」

ドラマ版全12話を通して明かされたSPECという特殊能力を基本設定とした上で、どこまで面白い能力を登場させ、どのように主人公たちと戦わせるのか、を試みたのがドラマスペシャルの翔、劇場版の天、ということになるだろう。それは能力対決の様相を呈し…

SPEC 〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜 甲の回~癸の回(TBS)

堤監督がかつて手がけたTRICKは自称超能力者が仕掛けたトリックを売れないマジシャンと物理学者のコンビが解き明かすミステリドラマであった。 本作自体の企画も、最初はそのアンチテーゼだったと思われる。 TRICKに出てきたような偽物ではなく、…

竹本健治『涙香迷宮』(講談社)

迷宮とは分岐がなく秩序だった一本道のことである。 迷路のように入口と出口があるのではなく、余すところなく敷きつめられた通路を進み、中央にある目的地を目指すのが本来の迷宮の姿である。 黒岩涙香が創り出した四十八首の暗号解読に取り憑かれた本作も…

柾木政宗『ネタバレ厳禁症候群 ~So sign can't be missed!~』(講談社)

あなたは一冊の文庫を手に取り、読み始める。 登場人物らしきイラストが入り乱れた表紙でページ数は三百もない。 序章を読んだ時点であなたは気づく。探偵と助手は自分たちがミステリの登場人物であることを知っていて、それをネタにしていることに。この本…

古野まほろ『天帝のみはるかす桜火』(講談社)

文章を恣意的に歪めて解釈したり、質問を意図的に曲解した上で回答したりと、日本語自体や論理的であることが軽んじられがちな昨今。さまざまなシチュエーションにおける、手続き的正義を達成する手段としての論理を存分に堪能できる短編集である。 ――といっ…

綾辻行人『人間じゃない』(講談社)

館シリーズの集大成的位置づけとされた『暗黒館の殺人』は、かつて作者によって極彩色の暗黒色と称された。ありとあらゆる色を塗りたくったあとの漆黒、と。 この短編集もデビュー30周年記念作にふさわしく、著者にとって集大成的位置づけの短編集である。 …

京極夏彦『虚実妖怪百物語 序/破/急』

この物語はフィクションである――らしい。 確かに冒頭にはそのことが自信なさげに書かれているし、作中には京極夏彦、平山夢明に荒俣宏、水木しげる大先生。さらには各出版社の編集者までもが実名で登場してくる。 だが、その一方で呼ぶ子、朧車、ひょうすべ…

メフィスト評論賞法月綸太郎賞を受賞しました。

本日発売の『メフィスト 2019 Vol.2』にメフィスト評論賞の選考対談&結果が掲載されています。同い年のミステリ作家が多すぎるので評論に転身した……わけではありませんが、僕が書いた「誰がめたにルビを振る」がメフィスト評論賞法月綸太郎賞を受賞しました…

名倉編『異セカイ系』(講談社)

冒頭からフルスロットルで展開される軽妙な関西弁と迫り来るセカイでなろうなメタ物語に惑わされてはいけない。 ここにあるのはどんなに困難で理不尽な運命が立ちはだかろうと、それを乗り越えようと懸命に努力を続ける作者たちの物語だ。そして何があっても…

清涼院流水『ルイス・フロイス戦国記 ジャパゥン』(幻冬舎)

日本の戦国時代とはどんなものだったのか――。 一般的にはあまり知られていない当時の詳しい状況をその目で見つめた宣教師ルイス・フロイスが遺した大量の原稿を、正確な資料と精確な表現によって、誰もが楽しめる歴史物語へと昇華させた希有な作品が本書であ…

田口幹人『まちの本屋』(ポプラ社)

地域のために。 それを念頭に、地方のいち書店を盛り上げていた書店員がいる。 かつて味わった敗北を胸に、かつてその書店にいた偉大な店長の思想を継ぎ、来店者が本を買う土壌を作った上で最適な季節に〝仕掛け〟の花を咲かす。 ふつうの書店員なら、本を売…

森博嗣『それでもデミアンは一人なのか?』(講談社)

「これは、とても静かだ」 かつて森博嗣自身がある作品を評した言葉だが、この作品を読んでいるあいだ、その言葉が頭に浮かんでいた。 作中では銃撃戦も起きればカーチェイスも起きる。だがそれでもたぐいまれなる客観性を有した主人公のフィルタを通すと物…

市川憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』(東京創元社)

『そして誰もいなくなった』や『十角館の殺人』、そして本作のような作品は、クローズドサークルもののなかでも〝全滅〟という一段高い縛りを設けている。 そのおかげで、レギュラー陣が生き残るだろうという安心感を与えず、緊張を保ったまま話を進められる…

相沢沙呼『雨の降る日は学校に行かない』(集英社)

この短編集の主人公たちは〝隅っこのひと〟たちである。 場の中心からはじき出されたひと、自ら出て行ったひと、そして中心と隅のあいだで揺れ動いているひと――さまざまな主人公たちは、世間と自分のズレ、そして外側の自分と内側の自分のズレに傷つき、ひと…

城平京『虚構推理 スリーピング・マーダー』(講談社)

探偵は証拠に証拠を積み重ね、たったひとつの真実にたどり着く。 だが時に、恣意的な証拠の選択や、論理の飛躍のせいで間違った結論にたどり着くことがある。そして一般的に、事実と異なる結論は悪である。 しかし、このシリーズは違う。 推理を口にするもの…

Short Reviewはじめました。

7月から毎週月曜日に400字程度のShort Reviewを書き続けてみることにしてみました。第1回目は陳浩基『世界を売った男』です。 画面を下にスクロールするか、右にあるLinkのShort Review一覧から進んでみて下さい。レビューというと、かつてミス研時代にブ…

陳浩基『世界を売った男』(文藝春秋)

記憶喪失は物語の自由度を広げる。 記憶が失われた部分には、数多くの物語が嵌まる可能性が存在する。その〝可能性〟は多くの展開を想像させうるため、固定された先入観が読者に根付きにくい。そして読者に先入観がない状態は、終盤におけるどんでん返しの不…

坂嶋竜が駆け抜けた1年半について

一昨年のキャスパ以降、まったく更新していなかったとは……。更新されていなかった期間の細々したことについてはtwitterに書いてますが、この期間に起きたおおざっぱなところをあらためてここにも。 『権謀術数 ‐おとしまえ‐ 壬生キヨムトリビュートアンソロ…

The BBBのCast Partyにて出張販売をします。

11/23、東京流通センターにて行われる文学フリマ東京に騙り部は参加し、既刊である『幻影復興 -メフィスト・リブート-』と『地下の国のリアス』を販売します。しかし、それに続き、さらに都内での販売が決まりました!! The BBB: Breakthrough Bandwagon Bo…

文フリ岩手限定小冊子「幻影物語」について

問い合わせがあり、長くなりそうなのでこちらで別記事にします。コピー小冊子「幻影物語 -Mephistory-」は文フリ岩手限定です。 ただし、第1回限定とは言っていないので第2回、第3回……と、 文フリ岩手にいらした方が手に入れられるようにしたいと思います…

「幻影復興 -メフィスト・リブート-」通販開始!

お待たせしました。 「幻影復興 -メフィスト・リブート-」通販の概要です。 文フリ岩手や奇想館に行くのが難しい方はどうぞご利用下さい。 まず、発送方法によって代金が変わります。 クリックポスト→1400円 レターパックライト→1600円 (2冊の場合はレター…

第1回文フリ岩手お疲れ様でした。

9月4日、盛岡で開催された第1回文学フリマ岩手に参加しました。予想以上にたくさんの来場者がいて、驚きました。 かなり読者を限定した本であることは承知していますが、 その上で手にとって下さった方、購入して下さった方、 それから差し入れをして下さ…

文フリ岩手――コズミック・イヴまであと5日

週に1回は更新しようと決めたのはいつのことだったでしょうか(遠い目) 校正して入稿しているうち、第1回分フリ岩手があと5日に迫って来ました。すでに告知の通り、騙り部はイ-04にて「幻影復興 -メフィスト・リブート-」を頒布します。 北は北海道南は…