坂嶋流記録庫

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相沢沙呼『雨の降る日は学校に行かない』(集英社)

 この短編集の主人公たちは〝隅っこのひと〟たちである。
 場の中心からはじき出されたひと、自ら出て行ったひと、そして中心と隅のあいだで揺れ動いているひと――さまざまな主人公たちは、世間と自分のズレ、そして外側の自分と内側の自分のズレに傷つき、ひとりで悩んでいる弱い存在だ。
 そんな主人公の元に、奇跡のような出逢いが訪れる。
 出逢いによる変化はごくわずかで、主人公が抱える大きな問題を解決するだけの力はない。だがそれでも、そのわずかの変化でどれだけ世界が違って見えるのか、どれだけ小さな一歩を踏み出す力になるのか――作者は最後まで主人公の手を離しはしない。
 このような奇跡が〝隅っこのひと〟に起きることがほぼないことを、残念なことに、我々は知っている。でもこの本を読んだ隅っこのひとは知るだろう――ここに自分のことをわかってくれるひとがいる、と。
 作者が〝隅っこのひと〟に寄り添う書き手であり、この作品以外でも弱さを書き続けてくれていることに感謝したい。
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