坂嶋流記録庫

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清涼院流水『ルイス・フロイス戦国記 ジャパゥン』(幻冬舎)

 日本の戦国時代とはどんなものだったのか――。
 一般的にはあまり知られていない当時の詳しい状況をその目で見つめた宣教師ルイス・フロイスが遺した大量の原稿を、正確な資料と精確な表現によって、誰もが楽しめる歴史物語へと昇華させた希有な作品が本書である。
 はるばる戦国時代の日本にやってきたフロイスキリスト教を布教していくなかで、日本の生活習慣を学ぶとともに日本語も学んでいく。その課程がほかの作家には不可能な、この作者にしかできない方法で、しかも直感的でわかりやすい形で読者に示されている様は読んでいて鳥肌が立った。
 本書は九州にやってきたフロイスが数多の困難を乗り越え、ついには京都に到着し、当時の日本を支配していた戦国の風雲児・織田信長と出会う直前の場面で終わりを迎える。信長と対面する2巻はすでに書き上がっているらしく、続刊が世に出る日を伏して待ちたい。
 日本人が知らない本当の日本史が、ここにある。
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