坂嶋流記録庫

Inverse Archives

BABYMETAL『METAL GALAXY』(TOY'S FACTORY)

 アイドルグループの部活動?から始まったBABYMETALも幼年期(BABY)や反抗期(RESISTANCE)を経て、銀河までスケールを広げた。一方で地に足を付けるように地球=世界各国も歌い上げている。
 バブリーメタル「DA DA DANCE」やメタル盆ダンス「PA PA YA!!」、インド風の「Shanti Shanti Shanti」にロシア風「Oh! MAJINAI」とあくまでメタルに軸足を置きながら、世界各国の音楽を取り入れているのは組み合わせの妙といえる。
 それに加えゲームが題材の「↑↓左右BBAB」や言葉遊びタイトル「Night Night Burn!」、メタルラップ「B×M×C」のような遊び心溢れる曲が混じっていく。
 かつて、遊び心に溢れ、世界中の音楽を届けようとする3人組が存在した。フォーク・クルセダーズだ。その名前をもじるなら、BABYMETALはメタル・クルセダーズといえるだろう。 
 しかし、彼女たちの旅は終わらない。
 曲のスケールは銀河まで広がり、「Starlight」や「Shine」を経てメタル十字軍の旅は「Arkadia」へと辿り着く。3人でパフォーマンスする、ふたり組ミュージシャンという捻れた存在のBABYMETAL。彼女たちの理想郷の先に何があるのか、目が離せない。
www.toysfactory.co.jp

古野まほろ『時を壊した彼女 7月7日は7度ある』(講談社)

 魂がぶつかり合う音が聞こえる――そんな気がした。
 友人を救うため、何度も何度も時を戻して戦う彼女たちの青春がここにある。古野まほろの描く青春は、いつだって命がけだ。だからこそ、秘めた想いを言葉にし、論理と情理がぶつかり合い、望んだ未来を手にしようとする様は読む者の心を打つ。
 デビュー作以来、著者が繰り返し描いてきた高校生、音楽、青春、そして謎とその論理的な解決――本格であること、その集大成にして現時点での最高傑作がこの作品だ。
 法律を学んだものならではの厳密なSFルール設定。吹奏楽経験者ならではの吹奏楽部の描写。ロジック派ならではの数え切れないほどの伏線回収と導き出される事実。たったひとつの鍵を起点に、一気に様変わりする世界。仮説と論理が導き出すのははるか彼方にあったはずの真相で。それを知ってしまった彼ら、彼女らの関係が元に戻ることはない。
 青春は儚い。だからこそ美しい。
 それが古野作品が放つ、比類のない魅力である。
furunomahoro.com