メフィスト評論賞法月綸太郎賞を受賞しました。
本日発売の『メフィスト 2019 Vol.2』にメフィスト評論賞の選考対談&結果が掲載されています。同い年のミステリ作家が多すぎるので評論に転身した……わけではありませんが、僕が書いた「誰がめたにルビを振る」がメフィスト評論賞法月綸太郎賞を受賞しました。
メフィスト評論賞に関わったすべての方、中でも拙論を選んで下さった法月綸太郎様、本当にありがとうございます。また、取り上げたメフィスト賞作家の存在がなければ、この評論は生まれませんでした。清涼院流水、氷川透、古野まほろ、深水黎一郎、名倉編の各人(敬称略・受賞順)にも心からの感謝を。
選考対談でも触れられてなかったので自分から言っておきますが、「誰がめたにルビを振る」は『陽炎図書館』収録の「まほろばを流れる水」を2倍強まで加筆したものです。
ただ、2011年に書いた「まほろばを流れる水」自体が僕にとって大学の卒論以来の論文であり、それから8年のあいだ、小説だけを書いてきたため、評論らしい評論はもちろん書評的なものはまったく書かずに過ごしてきました。
なので、これからは評論の腕を磨き、法月賞の名に恥じないものを書けていけたら、と思います。
とはいえ――これは法月さんに選んでもらったことと繋がるのかもしれませんが――僕はもともと小説でのデビューを目指しているため、小説でもデビューして二刀流になれるよう、これまで通りがんばっていきたいと思います。
名倉編『異セカイ系』(講談社)
冒頭からフルスロットルで展開される軽妙な関西弁と迫り来るセカイでなろうなメタ物語に惑わされてはいけない。
ここにあるのはどんなに困難で理不尽な運命が立ちはだかろうと、それを乗り越えようと懸命に努力を続ける作者たちの物語だ。そして何があっても登場人物を生かそうとする読者の物語でもある。
そして読み進めるうち、〝君〟も物語のなかへと否応なく取り込まれていく。作者はもちろん、読者も作品の一部であり、登場人物のひとりに過ぎず、万能の存在ではないと気づくだろう。
そして、真実に辿り着いたとき――
あなたは気づく、物語の力に。
物語は壁を打ち壊せることに。
そしてその力は作者だけでなく、読者の存在があってこそ生み出されるものなのだ、と。片方だけではダメなのだ。両者の幸福な共犯関係があってこそ、読書という愉しみがもたらされるのだ、と。
読了後、読者も作者も幸せになれる――そんな良い世界がここにある。
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