坂嶋流記録庫

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「SPEC 翔&天 〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」

 ドラマ版全12話を通して明かされたSPECという特殊能力を基本設定とした上で、どこまで面白い能力を登場させ、どのように主人公たちと戦わせるのか、を試みたのがドラマスペシャルの翔、劇場版の天、ということになるだろう。それは能力対決の様相を呈し、ジョジョHUNTER×HUNTERを彷彿とさせる魅力を放つ。
 だが――物語は視聴者の期待以上に広がり続ける。
 大勢のSPECホルダーが登場し、メタな能力が登場する翔、SPECホルダーを全滅させようとする側とそれに抵抗しようとする側の戦いが描かれる天。SPECを持つ者と持たざる者の戦いは次第に入り乱れ、人間の存在を信じるものと信じない者の戦いへと変化していく。
 その最終決戦、ドラマ版のクライマックスを想起させる当麻と〝ニノマエ〟との命をかけた戦いを描き切ったことで、SPECホルダーをめぐるミステリドラマは終わりを迎え、物語は上位次元へと昇天する――その先に結があることを望みながら。
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SPEC 〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜 甲の回~癸の回(TBS)

 堤監督がかつて手がけたTRICKは自称超能力者が仕掛けたトリックを売れないマジシャンと物理学者のコンビが解き明かすミステリドラマであった。
 本作自体の企画も、最初はそのアンチテーゼだったと思われる。
 TRICKに出てきたような偽物ではなく、本物の特殊能力保持者(SPECホルダー)が関わった犯罪を、あくまで現実の、警察の視点で戦い、解決していくそれはミステリやライトノベルでありがちなバトルである。
 しかし様々な小ネタで笑いとシリアスの緩急を巧みに操り、独特な視点で撮影された映像はミステリドラマの枠を飛び越え、幅広い視聴者へと届けることに成功した。
 SPECを持つものと持たざるもの――彼らの戦いはドラマ全十話をかけて描かれたニノマエらとの戦いを経て、一段階上のステージに到達する。ある大きな謎を残したまま終わった最終回(癸=起の回)を承け、物語は新たな地平へと翔んでいく――。
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