坂嶋流記録庫

Inverse Archives

SPEC ~結~ 漸ノ篇/爻ノ篇

 超能力を扱ったミステリドラマとしてスタートした本作は、視聴者の予想をはるかに越え、人類を滅ぼす側とその可能性を信じ守ろうとする側との戦いに焦点が移っていく。
 当麻とセカイ、出現させる力と消失させる力。
 それぞれが持つSPECの対照性は、そのまま人類と向き合う姿勢と言えるだろう。
 ただし、これまで描かれていた相手の特殊能力を頭脳で倒すやり方はごく一部を除いてなりを潜め、本作では徹頭徹尾、人類を信じる力であり、その象徴としての絆に焦点が向かっている――未詳の絆、仲間たちとの絆、かつての敵との絆。死んでしまったひとたちとの絆。
 当麻が救いたかったのは曖昧で抽象的な人類ではなく、見知った人たちを含む人類であり、世界だった。だから最終的に描かれる「彼女」との絆はバッドエンドと捉えられがちな結末に、ほのかで暖かな光を投げかけている。
 それこそが希少な展開の先に示された、SPECという物語と視聴者との絆なのかもしれない。
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「SPEC 翔&天 〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」

 ドラマ版全12話を通して明かされたSPECという特殊能力を基本設定とした上で、どこまで面白い能力を登場させ、どのように主人公たちと戦わせるのか、を試みたのがドラマスペシャルの翔、劇場版の天、ということになるだろう。それは能力対決の様相を呈し、ジョジョHUNTER×HUNTERを彷彿とさせる魅力を放つ。
 だが――物語は視聴者の期待以上に広がり続ける。
 大勢のSPECホルダーが登場し、メタな能力が登場する翔、SPECホルダーを全滅させようとする側とそれに抵抗しようとする側の戦いが描かれる天。SPECを持つ者と持たざる者の戦いは次第に入り乱れ、人間の存在を信じるものと信じない者の戦いへと変化していく。
 その最終決戦、ドラマ版のクライマックスを想起させる当麻と〝ニノマエ〟との命をかけた戦いを描き切ったことで、SPECホルダーをめぐるミステリドラマは終わりを迎え、物語は上位次元へと昇天する――その先に結があることを望みながら。
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