坂嶋流記録庫

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京極夏彦『虚実妖怪百物語 序/破/急』

 この物語はフィクションである――らしい。
 確かに冒頭にはそのことが自信なさげに書かれているし、作中には京極夏彦平山夢明荒俣宏水木しげる大先生。さらには各出版社の編集者までもが実名で登場してくる。
 だが、その一方で呼ぶ子、朧車、ひょうすべ、そして河童など、数多くの妖怪たちが人間の目に触れ始め、日本中を揺るがす〝妖怪大戦争〟が始まるという展開を見る限り、作者が楽しげに大法螺を吹いている様子が想像できる。
 法螺話はあくまで作り物。
 作り話にすぎないはず――だった。
 しかし作者がこれまでの作品でさんざん主張し、本作でも繰り返されるように、妖怪とはさまざまな不思議――理解を超えた出来事、理不尽な物事、不条理な事柄に対し、後付けで作られた原因なのである。
 そう考えるならば――、
 この物語自体、、、、、、が、現代日本が荒んだ空気に包まれ、殺伐となりつつある理由を説明するために生み出された妖怪とも言えるだろう。
 この世には、妖怪が必要なのだ。
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